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2008年10月 3日 (金)

奥尻ワイン テイスティング会

北海道の離島の一つ、奥尻島で8年前からブドウ栽培に取り組んで来た会社があります。海老原建設という会社です。
先月ワイン醸造工場が完成し、今後は同会社のグループである農業生産法人奥尻ワイナリーが醸造・販売を行います。今年収穫されたブドウはこの工場で醸造され、来年初リリースとなりますが、その前に、2006と2007年の収穫ブドウで、岩見沢にある宝水ワイナリーに醸造を委託し、ワインを造っていました。しかしそれは生産量が少なく、市場に出ていません。それを「ワインと食事を楽しむ会in札幌」の主宰、ヤックリュさんが海老原社長に直接お願いをして入手し、今回そのメンバーでテイスティングをすることになりました。

会場は前回「美味しい道産ワインと食材のマリアージュ会」でお世話になった「WINE BAR DINING 宙 SORA French」です。

参加者は10名。

Photo



美味しいお料理とともにテイスティングした奥尻ワインをご紹介します。

①ノースレッド 2007

07ノースレッドという生食用ブドウから造られたワインです。おそらくこの品種でワインを造っているのは道内ではここだけだと思います。ガムシロップのような甘く化学的な香りがし、口に含むとキャンベル・アーリーやデラウエアといった生食ブドウの香りがします。生食ブドウですが、おたるワインにみられるような甘口ではなく、辛口に仕立てていますが、酸味が強く、甘味も隠れてしまっています。アルコール度数を下げて、もっとフレッシュ感を出すと面白いワインかもしれません。


②ミュラー・トゥルガウ&バッカス 2007

07_2ミュラー・トゥルガウとバッカスの混醸です。鶴沼バッカスのようなフローラルに、やはりガムシロップのような香りが混ざります。ミュラーやバッカスらしい甘味はほのかに感じますが、果実味が薄く、その分塩気を強く感じます。後半で苦味が突出してしまい、バランスが今ひとつ。余韻も短いです。


③ケルナー 2006

06香りがほとんど立ちません。ケルナーらしい甘味は薄いながらも感じます。やはり塩気が強く、その後にしっかりとした酸味が続きます。余韻はそこそこあります。余市のケルナーと比べると塩気が強く、やはり果実味が薄い印象です。時間が経ち、温度が上昇すると果実味がより膨らんで、まずまずの味わいに変化しました。


④ケルナー 2007

07_3こちらもやはり香りが立ちません。酸味は06よりしっかりとした印象で、余韻も根菜の味わいが長く続きます。この酸味だと1年置いたら面白いかもしれません。果実味の凝縮感は私は06の方が上だと感じました。



⑤シャルドネ 2007

07_4 こちらも香りが利けませんでした。薄い果実味に酸味、苦味が強調されてしまい、私としてはちょっと飲みきるのが辛かったです。余韻も短いです。この数日前に長野のシャルドネを飲んだので、より未熟に感じてしまったかもしれません。



⑥ピノ・グリ 2007

07_5 香りはやはり甘い化学的な香りがします。含むと苦味がまず口の中全体に広がり、その後酸味と塩味が続きます。甘味を期待して飲み込むとまた酸味が広がります。タンニンは全く感じられません。未熟な青いブドウを想像してしまいます。



⑦ピノ・ノワール 2007

07_6 ここから赤です。赤ですが色が薄い!ほとんどロゼです。枯れ木や赤いベリーの香りがします。色と同様、薄い甘味にほんのり苦味、そしてしっかりと酸味が続きます。道産ピノらしく酸味は強いですが、舌を刺激する攻撃的な酸味ではありません。酸っぱいワイン好きな私には許容範囲です。ピノ・ノワールの赤ではなく、道産ロゼだと思えばなかなかの味わいだと思います。


⑧ツヴァイゲルトレーベ 2006

06_2 濁っていて、残念ながら香りも酸化臭でした。酸っぱい乳酸菌飲料といった感じです。おそらく瓶内で再発酵したのでしょう。残念。




⑨ツヴァイゲルトレーベ 2007

07_7 ツヴァイ独特の枯れ木のような香りの中にベリーと堆肥が混ざります。焼けた髪の毛も若干あり、こちらは逆に還元した感じです。道産ツヴァイにしてはタンニンは少ない方です。苦味が妙に強調され、酸味も拍子抜けする位弱いです。ダメージを受けていると思われます。残念。


⑩メルロー 2006

06_3こちらもメルローにしては薄いルビー色です。赤いベリーに奥にハーブのニュアンスも感じます。味わいは薄い乳酸菌飲料を彷彿させ、そこに苦味を加えたような感じです。メルローだと思わないで、単純に道産赤として味わえば、悪くはないと思います。


⑪メルロー 2007

07_8 かなり強いピーマン香がします。味もえぐみのような青っぽさがあり、苦味が強いです。06と比べると酸味はしっかりしているので、これもあと1年置くと変わるかもしれませんが…。これもやっぱり未熟なブドウをイメージしてしまいます。



総評として、現時点では未完なワインだと思います。

白で感じた強い塩気は、味わいのバランスを損ねますが、これは奥尻のテロワールを表現するプラス材料だと思います。この塩気をうまくまとめるだけの凝縮された果実味があればきっと「海を感じる島の美味しいワイン」になると思います。

赤は全般的に薄く、タンニンも弱いです。これは奥尻に限らず多くの道産ワインに共通した点です。ピノ・ノワールやメルローといった国際品種を植えていますが、これが世に認められるようなワインを造り出せるようになるまで時間はかなりかかるのではないでしょうか?
もしこれら国際品種にこだわるのでしたら、以前も提言していますが、単一品種にこだわらず、ブレンドをすることによって奥尻の畑を表現するワインを造ってもらいたいです。

生意気ですが、今回のワインの裏に、ブドウの未熟さを感じてしまいました。どういうワインを造るか?ということも大切ですが、どうやってより美味しいブドウを造るか?というところにこれからももっと力を入れる必要があると思います。
潮風が強い島ですので、塩害といつも背中合わせの厳しい条件下での栽培になるでしょう。ワインは自然の恵みですが、ワインの歴史は自然に逆らうための人間の知恵の歴史でもあると思います。池田町は「ブドウ栽培は無理」と言われながらも、長い年月をかけて寒さに勝てるブドウを造りだしました。
奥尻も、奥尻の自然に負けずに奥尻で育つブドウを、人々の知恵で育て上げて欲しいと思います。それによって初めて、島の美味しいワインが出来ると思います。

期待しています。

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コメント

昨夜はご参加頂きありがとうございました。
道産ワインを20年以上飲み続けてこられた広い見地からのコメント。いつもながら勉強になります。

私には、その葡萄それぞれの質と特徴に関する評価ができず、美味しいと思えるワインとの価格と質とのバランスという短絡的な比較に終始する薄っぺらな感想にしかならないところを恥ずかしく思っております。

これからもご指導頂けますよう、よろしくお願いいたします。

投稿: ヤックリュ | 2008年10月 3日 (金) 22時11分

ヤックリュさま
貴重な機会をご提供いただき、ありがとうございました。

>美味しいと思えるワインとの価格と質とのバランスという短絡的な比較に終始する薄っぺらな感想にしかならないところを恥ずかしく思っております。

私は消費者としてはその視点こそが大切だと思っています。ヤックリュさんのような、価格や人の評価などにとらわれずにどんなワインでも同じ土俵の上で評価する姿勢を見習いたいと思います。

こちらこそ、今後ともご指導よろしくお願いいたします。

投稿: アマ | 2008年10月 4日 (土) 08時32分

アマさんのブログを読むと、
いつも、アマさんのような方がいてくださり、
本当に良かったなぁと思っています^^
ワインに関する的確なコメントは
どれも参考になります。
ぶどうの未熟さなど私には、
さっぱりわかりませんでした^^;

そして、愛するがゆえの提言の数々、
どれも素晴らしいと思いました。
特に「海を感じる島の美味しいワイン」、
これは素晴らしいキャッチコピーになりそうです^^
ぜひ、アマさんから奥尻ワイナリーさんに
教えてあげてください^^

投稿: よし | 2008年10月 4日 (土) 08時44分

よし様
ありがとうございます。
褒められることに慣れていないので、戸惑ってしまいます(苦笑)。
適確かどうかは正直わかりませんが、感じたままを表現させていただきました。
完熟したケルナーや、ピノグリで造られたワインはほんのりタンニンを感じるんですよ。そこを確かめながら飲まれるとまた楽しいと思います。

キャッチコピーは…、
その通りのワインが出来上がってから使います(苦笑)。

投稿: アマ | 2008年10月 4日 (土) 09時51分

夏の座談会でも話題になった奥尻島のワイン、丁度その直前にNHKの朝のニュースで5分か10分ぐらい小特集として放映されていたのを見ていて(畑の風景も写ってました)、島の復興にかける想いがひしひしと伝わって来ました。

> どうやってより美味しいブドウを造るか?というところにこれからももっと力を入れる必要があると思います。
今回のアマさんの一連の文章を読んで、改めて「良いワインは、良いブドウから」の言葉の重みが伝わって来ます。農業は「自然に逆らうための人間の知恵の歴史」と仰る通り、ある意味自然に逆らって文明を築き上げた人間の営みの内の一つですから、、、。

『奥尻の、奥尻による、奥尻のためのワイン』として、そしていつか人々に喜びをもたらすワインとして巣立って行く未完の物語をゆっくり見守って行ければと、そして時が来れば訪ねることが出来ればと思います。貴重なレポ、ありがとうございました。

投稿: おっくー | 2008年10月 4日 (土) 15時44分

おっくー様
ありがとうございます。
本当に始まったばかりですので、私も経過を見守って行きたいと思います。楽しみが増えました!

投稿: アマ | 2008年10月 5日 (日) 16時27分

奥尻でこんなにたくさんの種類のワインを作り始めていたとは、道内に住んでいながら全く知りませんでした。
厳しい海風のある町と思いますが、元気にブドウの木々が育ち、その土地を感じられるワインを手にできる日を楽しみに待ちたいと思います。

北海道のワインも新酒が続々リリースの時期になりましたね。今年はどんな味わいのワインとなっているでしょうか。期待大です!

投稿: 副部長 | 2008年10月 6日 (月) 07時22分

副部長様

話題にはなりましたが、これだけの品種が造られているのは私も今回初めて知りました。
まだまだこれからですが、楽しみです。

今年は「初しぼり全制覇!」はちょっと無理かなぁ…。

投稿: アマ | 2008年10月 6日 (月) 21時03分

 こんばんは。奥尻ワインの会が催されていたとは!。私も実は1本、奥尻の赤を手に入れ、地下倉庫にしまってあります。
 今年は、新しい醸造施設に、去年まで宝水で醸造担当をしていた増子さんという方が出向いて、醸造すると聞いています。多少の時間をかけてからに期待したいですが、やはり新しいモノも飲んでみたい。いずれ、楽しみな新ワイナリーですね。

投稿: キャンティファーム | 2008年10月 9日 (木) 21時10分

キャンティファーム様

今回飲んだのはあくまでもサンプルですので、正式にリリースされるものはまた違った味わいになるようです。
そして今年のブドウは…
残念な結果との情報です。
今後が心配です。

投稿: アマ | 2008年10月10日 (金) 20時38分

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